6月から8月にかけて第2四半期の決算シーズンでは、多くの米国ヘルスケア企業も決算を発表しています。決算発表前後は株価が大きく動くので、売買のタイミングを見逃さないためにも日程と内容を事前にチェックしましょう。特に2022年は引き続き新型コロナウイルスの影響が考えられるため、ヘルスケア銘柄は要注目の分野となっています。
この記事では、ヘルスケア銘柄の特徴と業界の傾向、世界有数のヘルスケア企業の2022年第2四半期の決算をわかりやすく解説します。
ヘルスケア銘柄とは
ヘルスケア銘柄は全世界で今後も高い成長が期待される分野です。世界の株式時価総額ランキングにも多くのヘルスケア銘柄がランクインしており、近年の社会情勢も相まって注目度も高まっています。
特に米国市場では参入企業も多く、1000社以上のヘルスケア関連会社が上場しています。2021年の株式市場全体でのヘルスケア銘柄の割合は、IT分野に次ぐ二番手となりました。2022年に入って米国市場の景気後退傾向がみえる中でも、堅調さをみせている分野です。
ヘルスケア銘柄には、医薬品や医療機器の開発・研究、医療保険、薬局サービスなどさまざまな業態があります。また、近年では先進的な開発やサービス提供を行っている新興企業も多くでてきました。ヘルスケア銘柄の特徴は、景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄ということです。医療品などの生活必需品は景気に関わらず一定の需要があり消費されていくため、企業の業績も安定しやすい分野であり、ヘルスケア関連企業ではすでに成熟している大手企業が多く存在します。
ただし、必ずしも安全な分野であると断言できるわけではありません。予期できない社会情勢の変化が起こったり、特定の会社で医療事故が起こった場合などでも業界全体に影響を及ぼすおそれもあります。
また、ヘルスケア銘柄は長期的に安定した利益を得ることに向いているため、短期間に大きな利益を得るには不向きなデメリットもあります。ヘルスケア銘柄を検討する際には自分の投資プランをしっかり立て、企業情報に加えて社会情勢やニュースを定期的にチェックしましょう。
ヘルスケア銘柄の決算
ここでは、米国市場の中でも有数のヘルスケア銘柄の決算を3つご紹介します。
ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)
ユナイテッドヘルス・グループは総合医療サービスを提供する世界最大のヘルスケア企業です。2021年の世界企業番付「フォーチュングローバル500」では売上高8位にランクインした世界有数の大企業です。グループを大別すると、医療保険・マネージドケア商品を扱うユナイテッド・ヘルスケア社とオプタム社の2社で構成されています。
2021年から株価は右肩上がりの好調を保っています。2022年7月15日発表の第2四半期決算では市場予想を上回る好決算となり、ダウ平均株価の押し上げにも寄与しました。ユナイテッド・ヘルスケア社とオプタム社の両社ともに売上が二桁成長となり、売上高は803億ドルとなり前年同期比13%増。上半期の業績と成長への期待にあわせて、同社は通年の純利益見通しを20.45ドルから20.95ドルに引き上げました。また、1株当たりの純利益(EPS)を21.40ドルから21.90ドルに引き上げました。
決算発表にあたり、ユナイテッドヘルス・グループCEOのアンドリュー・ウィッティは「ユナイテッドヘルス・グループは主軸事業の成長に基づき、2022年後半に向け、より多くの人々により深くサービスを提供できるよう、強い勢いをもって取り組んでいきます」とコメントしています。

出典:ヤフーファイナンス
ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、米国ニュージャージー州に本社を構え、世界60カ国に265以上のグループ企業をもつ世界有数のヘルスケア企業です。医療用医薬品、医療機器、消費者向け製品の製造販売が主軸になっています。研究開発への投資額は他の産業と比較してもトップクラスで、長期的な取り組みへの投資で成長してきた企業です。
2022年7月19日発表の第2四半期決算では1株利益と売上高の見通しがともに下方修正となり、決算後株価は下落傾向にあります。決算ではがん治療薬や新型コロナワクチンの需要もあり総売上は市場予想を上回りました。売上高は前年同期比3.0%増の240億ドル、調整後の営業利益は8.1%成長。1株当たりの純利益(EPS)は4.4%増の2.59ドルとなりました。しかし、ドル高による海外売上高への影響を見込んで通期の利益見通しを引き下げるなど、社会情勢が強く影響した結果となりました。
ホアキン・デュアトCEOは「ジョンソン・エンド・ジョンソン全体の第2四半期の堅調な業績は、当社の市場リーダーシップの強さと回復力を反映しています。社員の集中力と情熱、そして世界中の患者と消費者に革新的なヘルスケアソリューションを提供しようとする彼らの献身に、私は常に元気をもらっています」とコメントしています。

出典:ヤフーファイナンス
ファイザー(PFE)
ファイザーは米国ニューヨークに本社を置く大手医薬品メーカーです。研究開発型の製薬会社であり、循環器、中枢神経、疼痛、がん、炎症・免疫、希少疾病、ワクチン、感染症、泌尿器、眼科など幅広い疾患領域で医療用医薬品やワクチンを開発製造し事業展開しています。
ファイザーは2021年に入り好調な株価の推移を示していました。2022年7月28日の第2四半期決算では売上高も利益も市場予測を上回り決算結果は好調でした。しかし、通気の売上高の見通しが上方修正されなかったことが悪材料となり、決算後株価は下落しています。また、米上院民主党で薬価の引き下げを盛り込んだ法案が合意されたことも悪材料となりました。決算結果は、新型コロナワクチンの売上が寄与し売上高は前年同期⽐47%増、調整後の1株当たりの純利益(EPS)が同92%増と⼤幅に伸びています。
アルバート・ブーラCEOは「事業成長に向けて戦略を大きく前進させるとともに、環境問題など、世界の幅広いニーズに優先的に対応します。例えば、温室効果ガス排出量の削減を目的とした「ネット・ゼロ・スタンダード」の達成という野心的な目標を設定しました。また、特許取得済み医薬品とワクチンを低所得者層45カ国12億人の人々に、業界で初めて非営利の価格で提供する取り組みも開始しました」と、今後の新しい戦略についてもコメントしました。

出典:ヤフーファイナンス
ヘルスケア銘柄決算まとめ
ヘルスケア銘柄は景気に左右されづらい分野であり、2022年初頭から続く景気下降傾向のある米国市場でも堅調な動きをみせています。しかし、ドル高の影響を受けて決算は良くても株価は下落する銘柄もあり手放しに安心はできません。また、COVID19など予測できない事象も起こりえます。
ヘルスケア銘柄は今後も世界的に成長が見込まれる分野です。売買のタイミングを逃さないためにも、個別銘柄の業績だけではなく業界全体の傾向、世界情勢、社会問題などもあわせて市場の動向を注視していきましょう。
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