なぜ、今の米国小売業において在庫が積み上がるのか?3つの原因と今後の展望を解説

米国の小売業において、1つの問題が浮上してきており、それが在庫の積み上がっています。

2022年5月17日に発表された米国小売り大手ウォルマートの決算は、純利益が前年同期比24.8%減の20億5,400万ドル、営業利益が23.0%減の53億1,800万ドルと急激な悪化を見せ、これにより、ウォルマートの株価も大幅に下落しています。

ウォルマートの業績が悪化した原因は、燃料価格の高騰や人件費の上昇、そして在庫の積み増しと言われています。ちなみに、在庫の積み増しが起こっているのはウォルマートに限らない。ターゲット、アマゾン、コストコなども在庫が急速に積み上がっています。

アマゾン、ウォルマートにコストコも……止まらない米小売の在庫増

なぜ、今の米国の小売業において在庫が積み上がるのか?その3つの原因と今後の展望について解説していきます。

目次

米国の小売業において在庫が積み上がる3つの原因

今、米国の小売業において在庫が積み上がる主な原因は以下の3つが考えられる。

  • 在庫切れを避けるために積極的な発注を行ったから
  • インフレや利上げに伴い家計支出が弱くなっているから
  • 消費財や耐久財よりも旅行や外食のニーズが高まっているから

それぞれを解説します。

在庫切れを避けるために積極的な発注を行ったから

米国の小売業において在庫が積み上がる1つ目の原因は、在庫切れを避けるために積極的な発注を行ったからです。

コロナ禍においては、サプライチェーンが混乱し、さまざまな商品の供給に乱れが生じました。消費者はコロナ対策のために生活必需品を買いこんだり、在宅時間が増えたために家電やルームウェアのニーズが高まったりしました。

こうした状況において在庫切れは売上機会の損失になるため、小売大手は消費者のニーズが高い商品を積極的に発注しました。

ところが、米国ではコロナの感染者が急激に減少し、日常を取り戻しつつあります。消費者は慌てて買い物をする必要がなくなり、外出する機会が増え在宅時間が減りました。

小売大手が積極的に発注をかけた商品の多くは、アジアなど海外からの輸入品です。サプライチェーンの混乱もあり、船便で届くこともあって、発注から数か月のタイムラグがあります。

すでに倉庫に在庫が残っている中で、さらに次々と発注した商品が船便で届いている状況です。このため、アメリカ西海岸の物流倉庫は、これ以上の受け入れができないほどの満杯状態になっています。

大手小売業の倉庫では、在庫切れを避けるために大量に発注した商品が届く一方、既存の在庫がはけないために、ますます在庫が積み上がるという状況に陥っています。

インフレや利上げに伴い家計支出が弱くなっているから

米国の小売業において在庫が積み上がる2つ目の原因は、インフレや利上げに伴い家計支出が弱くなっているからです。

新型コロナウィルスの流行やロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、世界的なインフレが起きています。インフレを抑えるためにFRB(連邦準備制度理事会)は、度重なる利上げを行いました。

物価も金利も上昇する中で、米国の個人消費は弱くなりつつあります。住宅ローンの金利が上昇し、住宅販売戸数も減少傾向です。

無駄な支出を避けるために、消費者は家計の管理を厳しくしがちです。本当に必要な食料品や日用品以外は、購入するのを避ける傾向が見られています。

インフレや利上げに伴い家計支出が弱くなっているため、大手小売業の在庫がはけにくくなっています。

消費財や耐久財よりも旅行や外食のニーズが高まっているから

米国の小売業において在庫が積み上がる3つ目の原因は、消費財や耐久財よりも旅行や外食のニーズが高まっているからです。

外出制限もマスクの着用も不要な米国では、アフターコロナの需要が高まっています。消費財や耐久財よりも、旅行や外食といった体験型の消費に人気が集まっているのです。

出張などのビジネス需要も回復しているため、米国の大手航空3社の営業収入がコロナ前の水準を上回っています。

外食の需要も旺盛で、マクドナルドの4-6月期決算(第2四半期)では、既存店売上高が予想を上回ったほか、1株利益も予想を上回りました。

消費者ニーズの急激な変化により、小売業は苦境に立たされています。なぜなら、巣ごもりして消費する消費財や耐久財よりも、外出して楽しむ旅行や外食の人気が高まっているからです。

コロナ禍で需要が旺盛だった消費財や耐久財が、アフターコロナで売れなくなっているため、小売大手では在庫を抱える状況になっています。

米国小売業の現在の状況

米ウォルマートについては、冒頭で紹介した通り、燃料価格の高騰や人件費の上昇、在庫の積み増しによって業績が悪化しています。

では、その他の大手小売業の状況はどうなのでしょうか。アマゾン、コストコ、ターゲットの直近の決算を確認してみましょう。

アマゾンの小売部門の状況

アマゾンの4-6月期(第2四半期)決算は、予想を上回る結果となりました。売上高は前年同期比7%増の1212億ドル、全体的には好調の業績となっています。

しかし、オンライン店舗部門の売上高は約509億ドルと3四半期連続で減収となっていて、アナリストの予想を2%も下回りました。外出制限が緩和され、消費者は実店舗に出向くようになったため、オンラインでの購入は減少傾向にあります。

オンライン店舗部門が不調なため、コロナ禍で急拡大させたアマゾンの物流インフラが活かしきれていない状況になっています。

コストコの小売部門の状況

コストコが発表した2-4月期決算(第3四半期)は、11株利益、既存店売上高、会費収入などの主要指標が予想を上回っています。ところが、決算後の株価は急落しました。

巣ごもり需要に備えて仕入れた大型家電やカジュアルウェアなどが大量に在庫していると見られ、大幅な値引きをせざるを得ないとみられています。

実際、6月には過剰在庫の解消に向けて、アパレルや家具、家庭用品などの商品の大幅な値下げを行うと発表しています。

ターゲットの小売部門の状況

ディスカウントストアチェーンのターゲットが発表した2-4月決算(第1四半期)は、純利益が前年同期比52%急減、10億1000万ドルとなりました。燃料価格の高騰や輸送関連コスト増がその原因とされています。

需要が安定している食品や生活必需品などの分野に重点を置き、家電製品などは値引きを行い、サプライヤーへの注文をキャンセルするなどして、在庫の解消に務めているとみられます。

米国の小売業における今後の展望

米国の小売業における在庫増は、必ずしも悪影響ばかりとは言えません。なぜなら、米国は秋の新学期や年末商戦に向けて商品在庫を拡充すべき時期であり、売上機会を損失するよりも在庫増加に伴う費用を負担した方がコストパフォーマンスは良いからです。

米国におけるコロナの感染状況がこのまま順調に推移すれば、秋の新学期、ハロウィーン、クリスマス、年末年始と爆発的な売上が期待できるでしょう。

つまり、これからのシーズンを考えると在庫不足で売るものがないよりも、在庫を大量に抱えている方が良いということです。

ウクライナ情勢が依然として不安定であり、コロナによる上海ロックダウンの影響もサプライチェーンの混乱に与えた影響は大きかったです。この秋以降の商品の調達が、必ずしも順調に進むとは限りません。

秋から年末商戦に向けて盛り上がる旺盛な需要を、売るものがないために取り逃がしてしまうくらいなら、いまのうちに在庫を目一杯抱えておいた方が良いという見方もできるのです。

一方、アメリカの景気はテクニカル的にはリセッション入りしています。また、この先も利上げが続く予定になっています。米住宅市場では、利上げの影響で購入キャンセルが増加しています。

米国株の主な指標は、短期的には上昇していますが、長期的に見れば上昇トレンドに転換したようには見えません。

秋から年末に向けて個人消費が急速に落ち込むようなことがあれば、米国の小売業は在庫を抱えきれなくなってしまうことでしょう。

秋から年末に向けて米国経済は大きく盛り上がるのか、それとも本格的なリセッション入りに向けて消費が落ち込んでしまうのか。米国の小売業の行く末から目が離せない状況になっています。

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