EV関連株の四半期決算が出揃いました。今期は半導体不足やウクライナ情勢による資材の高騰などさまざまな分野で影響を受けています。
今回はEV業界をけん引しているメーカーや今後参入しシェアを拡大することが予想される企業情報や株価の推移を解説していきます。
EVとは
EVとはElectric Vehicleの略で、主に電気自動車のことを指します。モーターで車輪の駆動を行い、モーターの電力は車内に搭載したバッテリーで供給を行います。EVでは化石燃料にに頼る必要がないため、CO2の排出量が削減に貢献するので地球温暖化防止に繋がるでしょう。
北欧から始まったガソリンエンジンの新車販売禁止の動きにより、2040年にはすべての新車がEVになるといわれています。EVはガソリンエンジンに比べて部品点数は少ないものの、バッテリーに頼る航続距離の問題や充電設備の普及など問題は山積みとなっています。2021年EVのシェアは1位のテスラが2割ほど占めており、2位BYD (中国) が10%弱となっています。
EV銘柄の決算
ここでは、EV銘柄の決算を3つご紹介します。
テスラ(TSLA)
事業概要
テスラは米国テキサス州に本社を置く、電気自動車およびクリーンエネルギー関連企業です。テスラ社の製品には電気自動車以外にも、家庭用からグリッドスケールまでのバッテリー電動輸送機器、ソーラーパネル、およびその他の関連製品とサービスが含まれます。
EPS(一株あたり利益)
2022年7月20日の第2四半期決算発表後のEPS実績は、2.27ドルとなり、アナリスト予想の1.81ドルを上回りました。
テスラの株価の推移

出典:ヤフーファイナンス
2021年11月にはレンタカー大手会社がテスラのEVを10万台受注したことをきっかけに一時1200ドルを超える過去最高値まで上昇しました。その後はテスラ社CEOイーロン・マスク氏の自社株売却やアナリストの目標株価を下げたことに嫌気がさし下落トレンドが続きます。
2022年に入ると47万台のリコールが発生したことにより、急落しました。その後2022年3月には、ウクライナ危機で原油価格が急騰しており、ガソリン価格の上昇が懸念される中、電気自動車へ消費者の目が更に向くのではとの指摘、アナリストが目標株価の引き上げを行ったことにより反発しました。
しかし4月に入ると中国のロックダウンのため生産調整が余儀なくされ、株価が620ドル付近まで大幅にダウン。第2四半期決算発表で売上高は前期比でマイナスとなりましたが、利益はアナリスト予想金額の19億ドルを上回る23億ドルで着地し、株価は時間外取引で約4%上昇しました。2022年7月26日現在では805ドルまで回復しています。
ガイダンス(CEOのコメントなど)
第2四半期の決算は169億3,400万ドルで、前期比の187億5,600万ドルから10%減でしたが、前年同期比では42%増となっています。利益は23億ドルで前年の同じ期間の11億ドルを上回ったが前四半期の33億ドルからは減少傾向です。
また2Qは上海のロックダウンにより苦戦が予想されたが、過去最高の生産台数を達成することができたとコメント。
さらに下半期は増産の見込みで記録破りの決算報告ができると予想しているとも発表しています。
ゼネラルモーターズ(GM)
事業概要
ゼネラルモーターズは米国ミシガン州に本社を置く、自動車メーカーです。創業は1908年と100年以上の実績がありますが、2009年に業績不振により経営破綻。同年に米国政府主導のもと経営再建が行われ、2020年にはコネクテッドカーの23%のトップシェアになっています。また2030年までには生産車の100%をEV車に切り替えると発表しました。
EPS(一株あたり利益)
2022年4月26日の第1四半期決算発表後のEPS実績は、2.09ドルでした。アナリスト予想の1.07ドルを上回りました。
ゼネラルモーターズの株価の推移

出典:ヤフーファイナンス
景気後退や半導体不足により、買い材料の乏しい自動車関連株ですが、1月中旬の13週と26週移動平均線を割り込んだことにより下落トレンドに向かいました。2022年4月にはコスト上昇により、アナリストが目標株価を下げてさらに株価が下落傾向に。その後も資材高騰が収束に向かう傾向にあることや在庫が正常化に向かうことをアナウンスするも株価は横ばいの状態が続いています。
ガイダンス(CEOのコメントなど)
第1四半期の決算は売り上げが359億7900万ドルと前年比で10%増加したものの、最終的な利益は29億3900万ドルと前年比の2%下回って減益となりました。原因は半導体不足による生産が滞るなどの影響とウクライナ情勢の原材料高騰によることと発表しました。
また米国での販売台数は20%減少しましたが、第4四半期の43%減に比べれば改善。
CEOは新型ピックアップの好調な販売とコスト抑制を理由に、厳しいマクロ環境に直面しながらも、変革加速の自信は強いとコメントしました。
フォード・モーター(F)
事業概要
フォード・モーターは米国ミシガン州に本社を置く、自動車製造会社です。1990年代から2000年代にかけてはジャガーやマツダなどの自動車メーカーを傘下に置いていましたが、現在では再び譲渡しています。2021年にはEV事業の生産計画を倍増し、年間60万台に設定しています。
EPS(一株あたり利益)
2022年7月20日の第1四半期決算発表後のEPS実績は、0.38ドルで、アナリスト予想の0.01ドルを上回りました。
フォード・モーターの株価の推移

出典:ヤフーファイナンス
ここ数年はほぼ横ばい状態が続いていましたが、失望的な決算発表のサイクルを終了するため電気自動車事業に本格的に参入すると発表後した2021年10月に急騰し、2021年からは20年ぶりの20ドル台に突入しました。
2022年1月にはEVのF-150ライトニングピックアップの売れ行きの好調をアピールすると、アナリストも目標株価を引き上げ一時期25ドルを超える価格まで上昇しました。しかし1月中旬には材料の出尽くしと利益確定売りが売りを呼び、15ドルを切る価格まで下落しています。
ガイダンス(CEOのコメントなど)
第1四半期の決算は売り上げ344億7600万ドルと前年の同じ期間から4%減少し、最終的な損益は31億1900万ドルあまりの赤字に転落しました。最終赤字や減益となった背景には、世界的な半導体不足や供給網の混乱が続き、自動車の生産が滞るなどの影響が出ていること発表しています。
またCEOはEV分社化に対し、事業ごとに補完的な分業体制をとることで、新興企業の成長スピードと新興企業にはないノウハウ・規模を両立すると発表、分社化の予定はないことを示唆しました。今後はEV事業拡大のため、最大8000名規模の人員削減を発表しています。
EV銘柄決算まとめ
まだまだ発展途上であるEV関連はこれからも急成長が見込まれます。欧州、中国のEVシフトがさらに加速するとともに、米国のEV車の普及も避けられないのが現状です。
EVメーカーテスラの強みは、コストのかかるバッテリーを自社で製造する予定だということです。これによりコスト削減はもちろん、バッテリーの安定供給につながり、さらなるシェア拡大につながるでしょう。
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