米国株の個別銘柄に投資をするなら、スクリーニングは欠かせません。さまざまなスクリーニングツールを使いこなすことで、投資対象候補の銘柄を効率的に見つけ出せます。ただし初心者の方の場合、使い方が分からず困ってしまうかもしれません。
今回はスクリーニングでよく使われる検索条件、各社のスクリーニングツールなどについて分かりやすく解説します。これから米国株でスクリーニングをしようかと思っている方は参考にしてください。
※本記事は投資関連の情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではありません。また将来の値動きについて確約するものでもありません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断で行っていただきますようお願いします。
米国株のスクリーニングとは
スクリーニングとはもともと「審査」「選考」「ふるい分け」といった意味で使われる言葉です。対象のなかから特定の条件に当てはまるものを選び出す行為のことを意味します。生物学・医学などでも「スクリーニング」という言葉は使われています。
投資・ビジネスにおけるスクリーニングとは、銘柄選びのことを指します。投資条件を設定し、該当する銘柄を選び出すことです。
割安な銘柄(バリュー株)を選ぶときは、PER・PBR・株主資本率などの指標でスクリーニングをするのが一般的です。それに対して成長性の高い銘柄(グロース株)の場合は、売上増加率、経常利益増加率、ROEなど収益性の高さを測る指標を組み合わせてスクリーニングをします。
米国株のスクリーニングでよく利用される条件
米国株のスクリーニングで、特に中長期投資の場合によく使われる指標について解説します。どの指標を利用するかは、投資家によってさまざまですので、あくまで一例として捉えてください。
PER
PERはPrice Earning Ratioの略で、株価収益率のことです。割安か割高かを判断する指標の1つで、株価を1株あたりの純利益(EPS)で割って求めます。
PER=株価÷1株あたりの純利益(EPS)
米国株で割安と判断される目安はPER15倍以下とされています。ただし業種・セクターによってPERは違うため、同業種の企業・ライバル企業についてもチェックすることが望ましいです。
PBR
PBRも割安・割高を判断するための指標の1つで、株価純資産倍率のことです。株価を1株あたりの純資産(BPS)で割って求めます。
PBR=株価÷1株あたりの純資産(EPS)
PBRが1倍で株価と資産価値が同等となるため、1倍未満だと割安だと判断されます。
ROE
ROEは自己資本利益率で、自己資本を使って効率よく利益を上げられたかを示す指標です。
ROE=当期純利益÷自己資本(株主資本)×100
一般的に20%前後だとかなり優良、10~15%では良い、10%弱くらいで普通とみなされます。
米国株のROEは10%ほどが平均値のため、10%以上を目安にするのが良いでしょう。
ROA
ROAは総資産利益率で、会社の総資産を使ってどれほど効率的に利益を上げられたのかを示す指標です。ROEと似ていますが、ROAの場合は自己資本だけでなく、他人資本(負債)も含めた総資本で計算するのが違いです。
ROA=当期純利益÷総資産×100
一般的にROAが5%を超えていると優良企業と判断されます。
配当利回り
購入した株価に対し、配当がどの程度受け取れたのかを示す指標です。
配当利回り(%)=1株当たりの年間配当金額÷1株購入価額×100
米国株は日本の株式より配当利回りが高い傾向があり、中でも3%以上あるものは一般的に高配当銘柄と判断されます。
自己資本比率
企業の全体の資本のうち、自己資本が何%を占めるかを示す指標です。
自己資本比率=自己資本÷総資本×100
自己資本は返済不要のため、自己資本比率が高いほど他人資本の影響を受けにくく。倒産もしにくい傾向となります。よって自己資本比率とは、経営の独立性・安定性を示しているとも言えます。
一般的に自己資本比率の目安として少なくとも30%程度は必要で、50%以上あるとかなり優良と判断されます。ただし業種によっても違うので、あくまでも目安として捉えてください。
米国株のスクリーニングができるツール
ここからは、米国株のスクリーニングで使えるツールを複数紹介します。
米国株スクリーナー
SBI証券が提供しているツールで、外貨建商品取引サイトからアクセスして利用します。最大の特徴は「SBI証券おすすめスクリーナー」という機能があることで、以下のような項目から簡単にスクリーニング条件を設定できます。
・大型優良株
・割安優良株
・値上がり追求型
・高成長型
・高配当銘柄
上記の項目をタップすれば、スクリーニング条件が自動でそれに沿ったものに設定されます。1つ1つの指標を設定しなくてもワンタッチですぐスクリーニングできるので便利です。指標の意味がよく分からない方でもスクリーニングができます。
SBI証券おすすめスクリーナーの他に、ユーザーが自由に条件を設定することももちろん可能です。「Myスクリーナー」ボタンを使うと、自分が設定した条件パターンを7種類まで登録することができます。
米国株スクリーナーを利用するには、外貨建商品取引口座を開設する必要があります。SBI証券は総合的にサービス内容が優れたネット証券です。口座開設は無料なので、試しに開設するのも良いでしょう。
銘柄スカウター米国株
マネックス証券が提供しているツールで、過去10年の業績をスクリーニングできる「米10年スクリーニング」という機能があります。過去10年の平均増収率・増益率、過去10年の増収回数・増益回数などを基にしたスクリーニングができます。長期的に優れた業績を出している銘柄を探すのに役立つ機能です。
またグラフ表示機能が充実しているのも大きな特徴です。売上高・営業利益などの業績を、過去10期以上に渡ってグラフで確認できます。数字の羅列では内容を把握しづらく、ぱっと見で分かりやすいのが好みの方にも向いています。
銘柄スカウター米国株利用するには、マネックス証券の総合取引口座・外国株取引口座の開設が必要です。いずれも無料で口座開設ができるため、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
FINVIZ
FINVIZはヒートマップでも有名なツールで、証券会社に口座を持っていなくても利用できます。FINVIZのスクリーニング機能の大きな特徴は、かなり細かい条件で設定できることです。

記述的(descriptive)、基本的(fundamental)、テクニカル(technical)の3種類のフィルターが用意されています。記述的フィルターでは時価総額や配当利回り、基本的フィルターはROE・営業利益など、テクニカルフィルターでは移動平均(20日・50日・200日)・RSIなどでスクリーニングができます。
FINVIZはデフォルトで英語表記になっているため、苦手な方は日本語表記にしましょう。たとえばGoogle Chromeには翻訳機能があるため、専門用語もある程度までは日本語に変換してくれます。ただしティッカーシンボルまで和訳されてしまい、どの銘柄かわからなくなってしまうことがあるので注意してください。
バフェットコード
バフェットコードは企業分析ができるツールで、無料で公開されています。トップ画面の「条件検索」を押すと、「日米銘柄スクリーニング」の画面に移ります。時価総額・`PBR・売上高・営業利益率・ROEといった指標のほか、業種や会計基準でスクリーニングをすることも可能です。
証券会社のツールと比べて条件の数は少ないものの、画面がシンプルなので初心者の方にとっては使いやすいでしょう。条件の数が多すぎるとかえって使いづらい、使いこなせないという方にも向いています。
バフェットコードはその他にもさまざまな機能がありますが、米国株で使えるのは企業比較です。複数の企業と指標を選択すると、選んだ指標に関する企業比較ができます。同業種の競合と比較して、どこに強み・弱みがあるのかを把握するのに便利です。
インベスティング ドットコム
インベスティング ドットコムは、金融関連のニュースやチャート、株式市場やFXなどのリアルタイムデータを提供しているサイトです。メニューの1つに「銘柄検索」があり、米国・日本を始め、さまざまな国の銘柄をスクリーニングすることができます。
インベスティング ドットコムで人気がある指標は、PER、時価総額、1年の変動、配当利回り、平均出来高(3ヵ月)などとなっています。その他にも多彩な指標が揃っていますので、色々と試してみたい方にも向いています。
銘柄検索は会員登録をしなくても、サイトにアクセスするだけで利用可能です。無料の会員登録をすると、ポートフォリオの作成・管理、ウォッチリストの作成やモニタリングなどができるようになります。
米国株のスクリーニングのコツ
スクリーニングに慣れない間は、なかなか該当する銘柄が見つけられなかったり、絞れなかったりするかもしれません。そこで、スクリーニングを行うコツについて解説します。
最初は条件を緩くする
スクリーニングのコツは、条件を厳しすぎないように設定すること。すべての条件で「非常に優良」に該当する銘柄はほぼありません。
最初のうちはある程度緩やかな数値で設定しましょう。
条件の優先順位を付ける
あれもこれもと条件を付けすぎるのも、銘柄が見つからない理由になってしまいます。どの指標を重視するのか、優先順位を付けてスクリーニングをしましょう。
たとえば長期保有でインカムゲインを重視する場合、配当利回り、自己資本比率などを重視することになります。一方で割安株(バリュー株)を探したい場合はPER、PBR、ROAなどが重要です。
スクリーニングをした後に確認するポイント
スクリーニングは銘柄探しに有効ですが、それだけで投資対象を決定できるわけではありません。スクリーニングで候補を見つけたら、以下のポイントをチェックしましょう。
チャートをチェック
スクリーニングはある時点の数字を使うことがほとんどなので、さらなる情報として株価の動きを時系列で見る必要があります。
株価のチャートを長期・短期でチェックすることにより、その銘柄が上昇トレンドなのか下降トレンドなのかが把握できます。
対象銘柄と同じセクターの企業やライバル企業の動きも合わせてチェックするとさらに良いでしょう。他の企業と比べて順調なのかどうかを判断できます。
ビジネス内容の理解
投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏の言葉の1つに、「理解できないものに投資をしない」があります。どのようなビジネスを展開しているのか、ビジネスが顧客にどのようなベネフィットをもたらすのか、自分自身が理解できないような銘柄には投資をしないということです。
その理由は、ビジネスを理解できない・知らないことは非常に大きなリスクになるからです。ビジネス内容を理解できていないと、その企業や業界の強み・弱み・機会・リスクが想像できません。
銘柄の良いところだけでなく弱みやリスクについても意識しておくことで、想定外のことが起きたときに冷静に対処できます。企業が展開しているビジネスモデルについて、ある程度頭に入れておきましょう。
まとめ:スクリーニングだけでなく他の指標も確認して投資をする
米国株のスクリーニングでよく使われる指標、役に立つツール、注意点などについて解説しました。バリュー株・グロース株それぞれで一般的によく使われる指標があります。それらを使ってスクリーニングを実践しながら、いずれは自分なりのスクリーニング方法を確立すると良いでしょう。
またスクリーニングは投資対象銘柄を選ぶ1つのステップです。スクリーニングだけで投資先を決めるのではなく、チャートの確認やビジネスモデルの理解をしたうえで検討しましょう。
ツールは証券会社に口座を保有する必要があるものだけでなく、誰でも自由に使えるものもあります。指標の数が厳選されているなどシンプルなものもあるので、こういったツールから触れてみるのも良いのではないでしょうか。



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