2022年現在、米国株は下落傾向が続いているのに加えて円安も進行しているから、今は買い時ではないと考える方も多いでしょう。新規スポット買いを止めたり、積立をストップしたりする方もいるかもしれませんが、それは妥当な判断なのでしょうか?
今回は円安が米国株投資に与える影響、円安時の米国株投資の考え方について解説します。米国株投資で資産を形成するための一助として役立ててください。
※本記事は投資関連の情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではありません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断で行っていただきますようお願いします。
円安は米国株投資にどのような影響があるのか?
米国株投資の観点で円安を見たときに、メリット・デメリットの両方が存在します。
円安のメリット
2022年は株式の下落相場で、米国株の多くの銘柄は株価を大きく下げました。しかし日本の米国株投資家は、円安があるだけまだ救われているほうです。なぜかというと、円に換算すれば為替差益があり、株式の下落損失を埋め合わせてくれたためです。
たとえばある株が50ドルだとして、1ドル=120円の評価額は6,000円です。その後株価が45ドルに下がっても1ドル=135円と円安になっていれば、評価額は6,075円で、収益はほぼプラスマイナスゼロになります。
つみたてNISAやiDeCoで米国株の投資信託を保有している場合、日本円の換算になるので、実は思っていたほどダメージを受けていないかもしれません。保有している資産の状況を確認してみてはいかがでしょうか。
円安のデメリット
一方で円安は良いことだけではありません。円安の時は海外のモノが高くなりますが、株式も同様です。株式投資の原則の1つは、安い時に買って高い時に売ることで利益を得ることですが、円安が絡むと新規投資が難しくなります。
新規買付の際の購入金額が、通常のときよりも高くなってしまい、投資結果にマイナスの影響を及ぼします。狙っていた銘柄が値下がりしていても、円安方向に大きくシフトしている状況では手を出しにくくなるでしょう。
円安が続く現在、米国株は買い時ではないのか?
S&P500の指数は2022年8月30日時点で4,030.61であり、年初の4796.56からは15%ほど下落しています。ただし円建てで換算すると、実は下落していません。たとえばS&P500に連動する投資信託であるeMAXIS Slim 米国株式の現在の基準価額を見ると、上下動を繰り返しながらも年初の水準から下がってはいないのです。
ドル建てと円建てをどのように考えるかは個人によって違うと思いますが、日本から投資をするという点で日本円が絡むのであれば、実はそれほど安くはないと判断することもできるのではないでしょうか。
ただし上記はあくまでS&P500で見たときの話です。たとえばS&P500に含まれない小型株などが大きく下落し、日本円に換算しても利益が出ると考えるのなら、スポットで投資をするという考え方もあるでしょう。
円安のときも米国株に投資をする考え方
円安の現在も、米国株に投資をすることにはメリットがあります。
積立投資
積立投資とは、毎月数万円など定額を積み立てていく投資方法です。米国株も、投資信託や個別銘柄などを積み立てで購入していくことができます。
積立投資は短期的な相場環境の変化に関係なく、長期的な資産形成を見据えて行うものです。よって円安であろうが株安であろうが関係なく、淡々と買付を続けます。
つみたてNISAやiDeCoで米国株投資を行っている方の中には、現在の相場の悪化でもう積立を辞めたい、売却したいと感じている方もいるかもしれません。しかし短期的な下落で投げ売りをするのは、長期投資で行ってはいけないことの1つです。
どのようなスタンスで長期投資を始めたのか、資産形成を始めた目的は何なのか、もう一度思い出す必要があるでしょう。
株価が大きく下落した時のスポット買い
米国株は下落トレンドに入っているため、安くなったタイミングで買う考え方もあります。円安ではあるものの、それ以上に株価が下がっていれば、結果としてお得な値段で購入できるチャンスもあるでしょう。
積立投資よりも短期を重視する投資になるので、自分なりに取引のルールをきちんと定めてからチャレンジしてください。
現在の米国株で考慮しておくべきリスク
米国株が買い時かを判断する際、現在意識しておくべきリスクについて解説します。
リセッション
2022年の米国株式に下落をもたらした要因はFRBの利上げ、コロナによるサプライチェーンの停滞、ウクライナ情勢などがあります。それに加えて今後懸念されているのが、リセッション(景気後退)です。
米国のGDP(国内総生産)は、1-3月の第1四半期、4-6月の第二四半期の2回連続でマイナス成長となり、テクニカルリセッションと呼ばれる状態になりました。
ただしアメリカ経済が正式に景気後退に入ったとは宣言されていません。その大きな理由として、雇用市場が好調であり、給料も上昇し続けているからです。またマイナス成長といっても第一四半期は1.6%減、第2四半期は0.9%減であり、マイナスの幅が縮小したというのも理由です。
一方で米国のエコノミストの予想によると、リセッション入りの確率は40~50%です。50%を超えてはいないものの、無視できない数字と言えます。
リセッションに入ると一般的に株価は下落する傾向です。1987年のブラックマンデー、2008年のリーマンショックなどのような現象が起こるリスクもゼロではありません。
円高の揺り戻し
為替を予測するのは株価を予測するのと同じくらい困難です。昨年は円安がここまで進むとは思われなかったように、円高への揺り戻しも想定外に進むかもしれません。
今までは円安によって日本の米国株投資家はある程度助けられてきた側面がありました。しかし、円高が進むと日本円に換算した評価額は下がります。
米国株が下落しているところに円高も重なると、保有資産を日本円で評価すれば当然ダメージになります。最悪リセッションまで訪れてしまうと、想定していなかったような損失が発生する可能性もあります。
為替レートがどう動いても対処できるように想定しておく
円安・円高は基本的に予測不可能と考えておきましょう。円安がしばらく続くのではないかと言われてはいるものの、急に円高に行く可能性も否定できません。
長期投資の場合は目先の相場動向に流されずに続けることが大切です。短期投資の場合、為替レートがどちらに動いても対処できるよう、想定をしておきましょう。
まとめ
2022年の米国株は下落相場が続いており、買い時が訪れているのではないかとチャンスを狙う方もおおいでしょう。しかし一方で円安傾向が続いており、S&P500の指数も日本円に換算するとそれほど安くはなっていません。
ドル建てか円建てか、短期か中長期か、大型株か小型株かなど、投資判断にはさまざまな要素が絡むため、今が買い時であるかそうでないかを一概に断言することはできません。
ご自身の投資スタンス・ルールに照らし合わせて慎重に判断してください。ただし積立投資はどのような状況でも積立を継続するのが鉄則なので、これまでどおり淡々と続けていくのが良いのではないでしょうか。
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