2022年6月現在、 米国株投資家の間でエネルギーセクターが注目されています。エネルギーセクターとは、石油やガスをはじめシェールオイル、風力発電などのエネルギーに関連する企業のことです。
2020年〜21年の米国市場はハイテク関連株が話題でした。しかし、現在はエネルギーセクターに注目が集まっています。どうしてエネルギーセクターが注目されているのかを疑問に感じている投資家も多いのではないでしょうか。
エネルギーセクターの企業はAppleやNetflixのように日本人に馴染みがあまりにない会社がほとんどでしょう。そこで、本記事では2022年に注目を集めているエネルギーセクターへの投資法、具体的な銘柄を紹介します。
米国株のエネルギーセクターが2022年に注目されている理由

(筆者作)
2022年、米国経済は金融引き締めの政策を進めており利上げを続けています。主要なインデックスも値を下げ物価も高騰しており「後退期」に既に入っていると解釈できる状況です。後退期に強い銘柄は一般的にエネルギーセクターだと言われています。
エネルギーセクターは資源価格と景気によって業績が左右されやすいという特徴があります。経済が再開すれば飛行機で旅行する人が増えたり工場が稼働したりするため、エネルギー需要が上昇します。資源価格は高騰しますが、資源価格は顧客に転化しやすいためインフレ対策にもなります。
例えば、飛行機に乗ればサーチャージを取られます。原油高になればサーチャージも値上がりします。自動車のガソリン価格も原油が上がれば一緒に高騰します。食料品などもインフレで値は上がりますが、原油などのエネルギー価格の高騰の方がより早く価格に転化されるのは、日常生活の経験からも想像しやすいのではないでしょうか。
このような背景からエネルギーセクターが景気サイクル上、投資に適しているのではないかと考える人が多いため、エネルギーセクターが話題となっています。
米国株のエネルギーセクター注目銘柄5選
米国株のエネルギーセクターの中から5銘柄を取りあげました。ロシア・ウクライナの戦争の終焉やイラン産石油に対する制裁解除の目処が立たず原油高が続く場合、エネルギーセクターの銘柄は追い風が吹くことになるでしょう。
銘柄1:シェブロン(CVX)

Trading Viewより シェブロン株価(5年)
シェブロンは世界的な総合エネルギー企業です。世界180国以上でエネルギー関連のビジネスを展開している企業で、エネルギーの開発・生産から輸送・販売までを全て一気通貫で手がけているスーパーメジャーと呼ばれる大手石油会社に数えられています。米国ではエクソンモービルに次ぐ第2位の規模です。
ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイが2022年に、シェブロンの株のポジションを4倍以上増やしたことはメディアでもとりあげられました。
シェブロンは原油高の恩恵を受けやすい企業で、通期決算で2020年12月と2021年12月を比べてみると売上高は前年比で84.6%、営業利益は808.3%増。PER13.6倍、ROE14.7%です。エネルギー関連のバフェット銘柄ということで、信頼感のある銘柄です。
銘柄2:コノコフィリップス(COP)

Trading Viewより コノコフィリップス株価(5年)
コノコフィリップスは、米国の独立系の石油会社です。エクソンモービルやシェブロンと同様、スーパーメジャーの石油会社の一つに数えられます。エネルギーセクターの中でも川上部門の採掘や生産がメインの会社です。
通期の業績2020年と2021年を比べてみると売上高は144%増、営業利益は770.6%増です。
シェブロンに比べると規模は小さいものの、PERは9.4倍でシェブロンより割安。ROEは27.8%とシェブロンよりも自己資本に対して高い利益率を出しています。PERやROEの数値の良さに着目するとコノコフィリップスを選んで投資するのも一つの選択肢に入るでしょう。
銘柄3:エクソンモービル

Trading Viewより エクソンモービル株価(5年)
エクソンモービルは米国の石油メジャーの最大手企業です。原油や天然ガスの探査と生産、石油製品の精製をしています。エネルギーセクターの中でも最大手の企業に素直に投資をするなら、エクソンモービルが選択肢に入るでしょう。
2020年と21年で決算を比べてみると、売上高は54.9%増、営業利益は181.6%増です。シェブロンに比べると前年比の伸び率の数字は小さくなっています。PERは14.4倍、ROEは15.8%とシェブロンと近い数字です。
ロシア極東のサハリン1事業からの撤退がネガティブに働きました。そのため2021年の第1四半期の決算では、34億ドルの評価損。また利益は市場予想を下回ってしまいました。
最大手ではあるものの、エクソンモービルの株主でヘッジファンドのDEショーからシェブロンに経営で遅れを取っているため改革が必要だと圧力がかかっています。
(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-12-10/QL329FT0AFB701)
銘柄4:ネクステラ・エナジー (NEE)

Trading Viewより ネクステラ・エナジー株価(5年)
ネクステラ・エナジーは、シェブロンやエクソンモービルとは毛色の違うエネルギー関連銘柄です。エネルギーセクターではあるものの、原油ではなく再生エネルギーの風力や太陽光、天然ガスなどの分野で世界最大規模の会社です。
公益企業という側面もあり、SDGsや環境問題への配慮がさけばれる時代だからこそ長期的に投資妙味がある銘柄と言えるでしょう。
ただし2020年と21年の売上高は前年比-5.2%、営業利益は-40.3%。ROEも4.0%、PERが105.4倍。原油高の恩恵をエネルギーセクターの中で受けることができず目先の決算では、従来のエネルギーセクター企業の方が良い数字が出ています。
銘柄5:アンテロリセーズ(AR)

Trading Viewより アンテロリセーズ株価(5年)
アンテロリセーズは天然ガス、液化天然ガスの探索と生産を柱にしているエネルギー関連企業です。エクソンモービルのような総合的なエネルギー関連企業とは異なり、天然ガス関連に特化したポートフォリオのため、天然ガス価格の影響を受けやすいのが特徴です。原油ではなく天然ガスの価格に着目している投資家には、アンテロリセーズのような銘柄も投資妙味があるでしょう。
売上高は2020年21年を比べると87.8%増、営業利益は358.2%増。PERは1株あたりの利益が赤字のため数字はなし。ROEは-5.8%です。
エネルギーセクターのETFのVDEも投資対象になる

Trading Viewより VDEの価格(5年)
VDEという米国のエネルギーセクター銘柄ばかりを集めたETFもあります。VDEは米国のエネルギーセクター100銘柄以上が組みこまれたETFです。「MSCI US IMI Energy 25/50 Index」に連動するのが特徴です。
エネルギーセクターの銘柄は配当が高いこともあり、2022年は約3%前後の配当利回りがありました。
上位10社は
- エクソンモービル(XOM)
- シェブロン(CVX)
- コノコフィリップス(COP)
- EOGリソーシズ(EOG)
- パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(PDX)
- シュルンベルジェ(SLB)
- マラソン・ペトロリアム(MPC)
- オキシデンタル・ペトロリア(OXY)
- バレロ・エナジー(VLO)
- フィリップス66(PSX)
https://investor.vanguard.com/investment-products/etfs/profile/vde#portfolio-composition
2022年6月現在、エクソンモービルが約20%、シェブロンが約16%と大手2社の割合が高いのが特徴です。
石油・ガス関連の銘柄に幅広く分散投資できるのが強みです。原油だよりの銘柄で構成されているためVDEは原油価格の影響に左右されます。エネルギーセクターでも特に原油価格の動きに連動しやすいETFです。VDEは日本のネット証券、例えばSBI証券、楽天証券、マネックス証券などで取り扱いがあります。
まとめ:エネルギーセクターへの投資では景気に注意する
2022年度の米国株のエネルギーセクターの注目銘柄とETFを紹介しました。エネルギーセクター関連と一言で言っても原油高の影響を受ける銘柄もあれば、そうでない銘柄があります。景気循環と原油高の観点からシェブロンやエクソンモービル、コノコフィリップスの業績は2021年と22年では伸びが目立ちました。再利用エネルギーや天然ガスは原油高の恩恵はそこまで受けていませんが、情勢が変われば原油頼りの銘柄とは違った動きが期待できるでしょう。
ただ景気循環と原油高でエネルギーセクターに注目は集まっているものの、景気が後退期から不況に入るとエネルギーセクターへの追い風が続くかどうかはわかりません。原油価格も今後、さらに高騰するのかどうかにも注意する必要はあるでしょう。



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