2021年に大幅な増加となった米国株ですが、2022年に入ってからは一転して下落傾向となっています。投資をしていて不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では米国株が下落トレンドになった背景や理由、投資でどのように対処すべきかの考え方について解説します。下落してもパニックにならず、落ち着いて考えることが重要です。
※本記事は投資関連の情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではありません。また将来の値動きについて確約するものでもありません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断で行っていただきますようお願いします。
2022年に米国株が下落トレンドになった理由
2022年に入ってから米国株が下落傾向になった理由は主に3つあります。
FRBによる金利引き上げ
米国の金利引き上げは2021年の時点ですでに材料として意識されていましたので、ある程度は市場も織り込み済みだったと言えます。
しかし2022年に入り、利上げの頻度や引き上げの幅が増えるのではないかという憶測も出始めています。このことが米国株の下落傾向の要因の1つになっているということです。
今後も金利を引き上げる可能性のあるタイミングは8~10回ほどあり、金利の引き上げ幅も0.75%などと大きくなると、市場に大きなインパクトを与えるかもしれません。
サプライチェーンの問題
新型コロナの影響は長引いており、中国はゼロコロナ政策を推進するため、上海などでのロックダウンが行われました。これにより中国経済の一部が一時的にストップしたため、全世界のサプライチェーンに大きな影響を与えました。
さまざまな原材料や部品などが不足したため、ハイテク産業・自動車産業などの生産にもマイナスの影響が出ています。たとえばトヨタ自動車は国内工場のうち10箇所について5日間停止すると発表しました。
ウクライナ情勢の緊迫化
2022年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻し、3ヵ月経過した現在も戦争が続いており、終戦の見通しは立っていません。ロシアへの経済制裁、ウクライナからの輸出のストップなどが、世界経済に徐々に影響を与え始めています。
EUは石油・原油のロシアからの輸入をストップし、天然ガスに関しても他国に切り替える方針です。しかし他の産油国はコロナ禍の需要減でいったん生産体制を縮小したため、増産には慎重な姿勢です。原油高騰が続き、エネルギー企業は増益となる一方、他企業の業績には悪影響を及ぼしています。
エネルギー大国である米国は増産を決定し、OPEC諸国にも増産を働きかけていますが、UAEやサウジアラビアなどが増産に応じるかは不透明です。
またウクライナからの小麦粉やヒマワリ油などの輸出が激減したことで、穀物市場にも影響が出ています。これまでウクライナから小麦を輸入していた国が、アメリカ・カナダといった日本が輸入している国に切り替えることにより、食料価格の高騰を招く恐れがあります。
米国株の下落相場はいつまで続くのか?
米国の経済自体は堅調なものの、インフレが進んでいることからFRBが利上げを加速するのではないかとの見通しは多く見られます。少なくとも今年の夏までは利上げ加速の見通しが続くのではないかと言われています。
中国のコロナ感染者数は徐々に減少し、6月に上海のロックダウンが解除されます。しかしサプライチェーンが正常化するまでは数か月かかると思われます。
ウクライナ情勢は依然として不透明で、戦争の長期化も予測されます。原油価格もまだ高止まりの状態です。
これらを踏まえると、少なくとも今年の秋頃までは下落相場が続く可能性があるのではないでしょうか。
米国株は長期的に上昇する可能性がある理由
一時的に下落している米国株ですが、長期的なスパンで見ると成長を続ける可能性が高いです。その理由について見ていきましょう。
大きな下落は過去にもあった
S&P500やNASDAQ100はピーク時から20%ほど減少しましたが、この程度またはこれ以上の下落は過去にもあったことです。
2008年のリーマンショック、2020年の新型コロナショックなどがありましたが、いずれも大きな下落から回復しています。
人口が減少していない
米国は先進国としては珍しく、人口が減少していない国の1つです。大幅な増加というわけではありませんが、微増を続けてきています。
この背景にあるのが移民制度で、米国は移民の受け入れを推進したことも経済成長の理由です。
各国の移民受け入れ状況に関しては、米国が最も多い人数を受け入れています。そもそもヨーロッパの人々が移民としてやってきた歴史があるため、国の誕生から現在に至るまで移民によってなされたと言っても過言ではありません。
主要産業におけるパワーが強い
現代の主要産業はIT・ハイテクであり、米国にはこの分野に強いグローバル企業がいくつもあります。GAFAMはもちろんのこと、エヌビディア、アドビ、ブロードコム、シスコシステムズ、インテルといった、そうそうたる有名企業が存在しています。
市場におけるこれらの企業の存在感は非常に大きく、数々の強みを備えているため、他の企業が簡単にポジションを奪えるものではありません。今後の世界の経済成長を考えたときにも、米国のIT・ハイテク分野の企業は欠かせない存在と言えます。
イノベーションの土壌がある
日本ではなかなか実現しないと言われるイノベーションですが、米国では最先端テクノロジーを中心に、どんどんイノベーションが生まれる土壌があります。
近年起きたイノベーションと言えば、新型コロナワクチンです。2020年1月時点でワクチン開発に関連した研究はなく、開発に数年かかるのではないかと言われていました。
しかし2020年末にファイザー社が開発したワクチンに対し、米国政府が使用許可を出しました。その後モデルナ社にも使用許可が出ることになりました。以前からmRNAという最先端のワクチン技術の開発を進め、新型コロナに適用したという技術開発力は、世界に米国のイノベーション力を見せつけたとも言えるでしょう。
米国のイノベーション力が高い理由としては、最先端技術を国として育てていく仕組み、コミットメント、気質、カルチャーのようなものが根付いているのが大きな理由です。また業界に対する規制のかけ方のうまさもポイントで。一概に厳しく規制するのではなく、イノベーションが必要な領域は規制を緩くするなど、バランス感覚に絶妙さがあります。
エネルギー・穀物の輸出大国でもある
米国というと最先端テクノロジーのイメージがありますが、一方でエネルギーや穀物の輸出大国であることも重要です。まず2020年の原油産出量は世界で第1位であり、天然ガスの輸出額では3位です。 米国がエネルギーの輸出大国となったのは、シェール革命により、これまで採掘が困難であったシェールと呼ばれる地層からの石油や天然ガスの抽出が可能になったことが要因です。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻をきっかけに、ヨーロッパはロシアからのエネルギー輸入を激減させ、他国からの輸入へ切り替える方針を固めました。すでにアメリカからのLNG(液化天然ガス)の欧州への輸出は4倍に増加したというデータも出ています。ロシアの輸出が減少し、米国がエネルギー分野でも存在感を増していくでしょう。
穀物でいえば、米国は大豆・とうもろこし・小麦などの輸出大国です。日本も米国から大量の穀物を輸入しています。小麦に関してはロシアとウクライナの穀倉地帯からの輸出が衰えるなか、米国・カナダ・オーストラリアといった地域への需要が高まっています。
米国はエネルギー・食物という人間にとって必要不可欠な領域において、いずれも世界的に力を持っている国という側面もあるわけです。
下落が続くなかで米国株投資はどうすればいい?
米国は世界経済においてパワーを失ったのではなく、いまだに大きな影響力を持ち続けています。しかし直近の株価相場の下落が気になる方も多いでしょう。
米国株投資にどのようなスタンスで臨めばいいのかについて解説します。
長期の積立投資は変わらず継続すること
まず長期のリターンを狙う積立投資は、これまでと変わらず継続して行いましょう。具体的には一般NISA、つみたてNISA、iDeCoなどです。20年・30年での資産形成を目指す投資のため、短期的な値動きに反応して止めてしまうのは非常にもったいないことです。
リーマンショックのときのインパクトと、その後の相場がどうなったのか、米国株の過去のチャートをぜひ見てください。長期的には米国株の成長性は依然としてあるため、米国や世界経済の成長に期待するのであれば、ここでひるむことなく継続することが大切です。
毎月の掛金を減らすこともおすすめしません。下落してきたということは、これから安く買えるチャンスが増えることでもあります。「ドルコスト平均法」と言い、積立投資ならではのメリットです。
相場が戻った時、安く買いつけられた分だけ利益も大きくなります。
ポートフォリオの調整
米国の個別銘柄に投資をしている場合、保有銘柄のポートフォリオについて再考するのも1つの手です。具体的にはディフェンシブと呼ばれる銘柄の比重を大きくすることが考えられます。
ディフェンシブ銘柄とは、景気に関係なく人々の日常で必要不可欠な商品を提供している産業に属する銘柄のことです。たとえば下記のような企業がディフェンシブ銘柄に該当します。
・P&G(日用雑貨品)
・ジョンソンエンドジョンソン(日用雑貨品)
・コカ・コーラ(飲料)
・コストコ・ホールセール(小売)
・ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(ドラッグストア・薬局)
・メルク(医薬品)
上記のように、ヘルスケア、公益事業、生活必需品などのセクターに所属する銘柄です。
現金を多めに確保しておく
長期の積立投資はそのまま継続しながらも、現金は多めに確保しておくことがおすすめです。狙っている銘柄の株価が魅力的な水準まで下がってきたときを見計らって、買いに転じるための準備です。
ただし暴落時に一括投資をすると、大きな損失となるリスクもあることに注意が必要です。チャートを観察しながら慎重にエントリーポイントを見極め、分割購入をしましょう。
まとめ:下落相場こそ投資を継続しよう
米国株が下落している背景として、FRBの利上げが加速する可能性、ゼロコロナ政策による中国経済の失速、ウクライナ情勢の緊迫化・長期化が挙げられます。中国の経済再開は見通しがある程度たってきていますが、サプライチェーンの回復には少し時間がかかります。FRBの利上げやウクライナ情勢は今後もどうなるか、予断を許しません。
ただし米国経済が衰退しているわけではなく、長期的には今後も成長する可能性が高いのではないでしょうか。その要因として、IT・ハイテク分野での強さ、人口が減少していない、イノベーションを生む土壌がある、エネルギー・食料が豊富といったことが挙げられます。
長期投資を行っているのであれば、ここでひるむことなく継続することが大切です。つみたてNISA、iDeCoなどは掛金の拠出をストップすることなく、淡々と行いましょう。ドルコスト平均法のメリットを享受するため、掛金も安易に減らさないようにしてください。
個別銘柄投資では、ディフェンシブ銘柄を意識するのも良いかもしれません。生活必需品、ヘルスケア、小売などのセクターの銘柄です。
投資でよい運用成績を出すには証券会社の選び方も大事なポイントです。
大事なお金を運用するからこそ、手数料の安さや銘柄の多さだけで選ばずに使いやすい機能なども気をつけないといけません。
チャート分析機能などを活用できれば利益が出せる可能性が高まるでしょう。



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