株投資をしていると「セクター」という用語をメディアやSNSなどでよく見かけます。業種別の分類という意味は何となく察しはつくかもしれません。しかし、セクターについて一歩踏みこんだ理解ができれば株式市場に対する理解が深まります。
本記事ではセクターの意味だけでなく分類方法、どのようなセクターがあるのか、さらにはセクターを活用した投資法をご紹介します。セクターが分かることで投資に対する視点が変わります。
そもそも株のセクターとは?
株のセクターとは一般的には業種別に分類したグループのことです。例えばAmazon、eBay、ShopifyなどのEC関連の事業をしている会社を集めればECセクターと言えるでしょう。
ジョンソン・エンド・ジョンソンやファイザー、イーライリリーなどのヘルスケア関連企業を集めればヘルスケアセクターになります。さまざまな視点から仲間分けされたグループの分類がセクターです。
同じ業種の株は似た動きをする
わざわざ同じ業種の株を仲間分けする意義はあるのでしょうか。
実は株の世界では、同じ業種の株は概ね同じような動きをすると言われています。試しにGoogleファイナンスで2022年の1月から4月分のデータを見てみましょう。
一例として航空会社グループと銀行グループを見てみます。

(Googleファイナンスより)
米国を代表する航空会社4つを集めました。上げ幅、下げ幅は異なるものの概ね同じような動きをしていることが分かります。

(Googleファイナンスより)
次は米国を代表する4つの銀行の値動きを比べてみましょう。振れ幅は異なりますが、似たような動きをしていることが分かります。
2022年の1月から4月だけを切り取ると航空株グループは健闘しています。しかし、銀行株グループの調子はよくないようです。
銀行株は2022年のFRBによる積極的な金融引き締めが経済を締め殺してしまう可能性、不良債権が増えてしまう懸念から同じように売られています。
株投資では銘柄を選ぶだけでなく業種、つまり勝ち組グループの業種なのか、負け組グループの業種なのかを
まずは選ばなければいけないことが分かります。
米国株セクター分類の代表はICBとGICSの2種類
米国株のセクター分類の方法には大きく分けてICBとGICSの2種類があります。仲間分けの基準が似通っていますが少しだけ違います。代表的な分類方法を一覧にしてまとめました。
ICB分類のセクター一覧
ICB分類はFTSEインターナショナル基準のセクター分類です。FTSEとはイギリス・ロンドンの拠点をおき株価のインデックスの算出・管理、金融データの管理をしている企業です。ICB分類は以下の通りです。
Tele communications(情報通信)GICSと違う部分 Technology(情報技術)GICSではInformation technologyと表現する。
Financials(金融)
Real Estate(不動産)
Consumer Discretionary(一般消費財)
Consumer Staples(生活必需品)
Industrials(資本財)
Basic Materials(素材)
Energy(エネルギー)
Utilities(公益)
ETFの運営で有名なVanguard(バンガード)社がICB分類を基準にセクターETFを組んでいます。
GICS分類のセクター一覧
GICS分類は世界産業分類基準のことです。株価指数を算出しているS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスとMSCIが共同開発した産業分類です。GICS分類は以下の通りです。
Communication service(コミュニケーション・サービス) ICBと違う部分 Information technology(情報技術)ICBではTechnologyと表現する。
Health care(ヘルスケア)
Financials(金融)
Real estate(不動産)
Consumer discretionary(一般消費財)
Consumer staples(生活必需品)
Industrials(資本財)
Materials(素材)
Energy(エネルギー)
Utilities(公益)
GICSの分類は国際標準の分け方として広く採用されています。主にSPDR(スパイダー)シリーズのETFで採用されています。
ICB分類とGICS分類の違い
ICB分類もGICS分類もほとんど違いはありません。ただ、
・ICBのTele communications(情報通信)
・GICSのCommunication Services(通信サービス)
この2つの区分は少し違います。ICBの情報通信は日本で言うNTT、KDDI、ソフトバンクといった通信キャリアの会社のみを対象とします。一方、GICSのCommunication Servicesは通信キャリアだけでなく動画配信サービスのNetflixやSNSを提供しているFBなども広く対象としています。
米国株のセクター別に騰落を調べるならFinvizを活用

(Finviz)
https://finviz.com/map.ashx?t=sec
市場全体の動向をひと目で把握できるツールがFinvizの提供しているヒートマップツールです。セクターと時価総額の規模、その日の値上がり、値下がりが一目で分かります。
米国株を扱うメディアやSNSなどでよく共有されているため、目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
Finvizのセクター分けはICBやGICSの分け方と微妙に異なりますが、名称の違いなど細かい部分での差しかないため、神経質になる必要はありません。市場全体に動向を大まかに把握するのに活用すると良いでしょう。
またFinvizは期間の設定、米国外のヒートマップ表示、配当利回りなどを表示させるなど、細かいカスタマイズもできます。
米国株の同じセクターをまとめて買えるETFの紹介
「決算書の分析や個々の企業のストーリーまで追えないが特定のセクターに投資したい」。
このように個別銘柄は選べないが特定の業種に絞って投資をしたいという方もいるのではないでしょうか。そんな方におすすめなのがセクターETFです。
GICSの分類で、それぞれのセクターに該当するセクターETFのティッカー・シンボルを挙げておきます。
X…ではじまるのがSPDR(ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ社のETF)
V…ではじまるのがVanguard(ヴァンガード社のETF)
Communication service(コミュニケーション・サービス):XLC、VOX
Information technology(情報技術):XLK、VGT
Health care(ヘルスケア):XLV、VHT
Financials(金融):XLF、VFH
Real estate(不動産):XLRE、VNQ
Consumer discretionary(一般消費財):XLY、VCR
Consumer staples(生活必需品):XLP、VDC
Industrials(資本財):XLI、VIS
Materials(素材):XLB、VAW
Energy(エネルギー):XLE、VDE
Utilities(公益):XLU、VPU
投資初心者でも最低限知っておきたいセクターローテーション

(本サイト制作)
セクターローテーションという投資戦略をご存じでしょうか。景気にはステージがありステージごとに有利な
業種と不利な業種があると言われています。
景気のステージに応じて投資するべきセクター、避けるべきセクターを判断する基準としても使えます。
景気は循環する
景気は循環していくと言われています。
景気が強くインフレの時期もあれば、景気が弱くてインフレの時期、景気が弱くデフレの時期、景気が強くデフレの時期と順を追ってステージが変わっていきます。
売買のタイミングや対象を景気のステージから考えてみることで、新しい投資アイデアが思い浮かぶかもしれません。
景気のステージで有利なセクターが変わる
景気のステージごとに有利なセクターETFの組み合わせは以下の通りです。
好況期: XLY、VCR(一般消費財セクター)
後退期: XLE、VDE(エネルギーセクター)
不況期: XLV、VHT(ヘルスケアセクター) XLP、VDC、(生活必需品セクター)
回復期:XLF、VFH(テクノロジーセクター) XLK、VGT(金融セクター)
ただ、セクターローテーションには注意点もあります。明確に景気がどのステージに突入しているのかを判断すること自体が容易ではない点です。
また、セクターを丸ごと買うよりもセクターのリーダー格の個別銘柄を選定できるのであれば、個別株投資の方が良い運用成績になります。
出遅れ株をポートフォリオに入れると運用成績は下がってしまうからです。セクター内で分散投資できる分、リスクが減る反面、リターンも減ってしまうことも理解したうえでセクターETFを活用しましょう。
まとめ
- 同じ業種の銘柄は同じような動きをする
- 米国株の代表的なセクター分類はICBとGICSの2種類ある
- セクター別に市況を見るならFinvizのヒートマップがおすすめ
- セクターETFを使えば特定の業種の銘柄群をまとめて買える
- 景気循環によって有利なセクターに乗りかえていくセクターローテーションという投資法がある
本記事ではセクター一覧をまとめながら、投資初心者が理解しておくと良い内容を解説しました。セクターの特徴が理解できれば、投資に対する考え方やアイデアもきっと広がります。
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