【SQ】Squareは金融業界のAmazonになれるか

square

コロナ禍でますます多様化した決済手段。皆様の中にも今までは対面中心だった決済手段も非対面に切り替えた方も多いのではないでしょうか。今回はそんな決済サービスを中心に提供しているSquare, Inc.(SQ)について現状からCOVID-19下の影響、更に将来の展望についてもみていきたいと思います。

目次
1. 会社概要
2. 事業の特徴
3. 会社規模
4. 業績
5. 財務分析
6. トピック:金融企業が音楽ストリーミング企業を買収?
7. 今後の業績見通し
8. まとめ

1.会社概要

<沿革>
2009年   ackDorseyとJimMcKelveyによって設立
2012年9月  三井住友カードが米国以外の事業者として唯一となる出資を行い資本提携
2014年8月   フードデリバリーサービスCaviarを買収
2015年11月  NYSE上場(クラスA普通株式約27,000,000株発行、1株あたり9ドルで公開
2018年4月   Webサイト構築及びホスティングサービス会社であるWeeblyの買収を発表
2019年   CaviarをDoorDashに売却

2.事業の特徴

SQが提供しているサービスは大きく分けて販売者向けサービス(Seller,下図青部分)と消費者向けサービス(Cash App, 下図緑部分)の2セグメントに分けられます。SQはこの2つの領域において、端末やオンライン上で決済サービスを提供しています。

Square Investor Presentation—(March 2021)
https://s27.q4cdn.com/311240100/files/doc_presentations/2021/05/Square-Investor-Presentation%E2%80%94March-2021.pdf

ただ、これだけ聞くと決済手段として有名なPayPal(PYPL)などと提供サービスに差異が見受けられないようにみえます。しかし当社が大きく株価を伸ばし、かつPBR48倍という数値からみても分かるように、市場から大きな期待を受けている理由は何でしょうか。

CNBC「Square Inc」
https://www.cnbc.com/quotes/SQ?qsearchterm=SQ

その理由は成長市場に適切に投資がで出来ており、かつその成果がしっかりと出てきていること、更に利用者を自社のエコシステムの中にうまく入り込ませる優秀なビジネスモデルを有していることであると考えます。

SQが属するグローバルデジタル決済市場は2019年には約5.6兆円(※以下 1ドル=110.6円で計算)と評価されました。そしてパンデミック下における非接触型決済に対する需要の高まりなどにより、グローバルデジタル決済市場は今後も成長を遂げると予想され、2021-2026年の間に18.55%のCAGRで成長し、2026年までに18.5兆円に達すると予測されています。

この成長市場の只中にいるSQですが、下図のように、当社は提供する製品、サービスをうまく組み合わせることで、サービスからの離脱を防いでいます。例えば、決済端末とそこから取得出来るデータを利活用したビジネスレポートサービス発行など、販売者側と購入者側がサービスを利用するにつれて、より最適化されたサービスの提供が可能になるためSquare上での活動が増加し、サービスからの離脱をさせないようにしているのです。

加えて「Cash App」というデジタル上でマネーの保管や送金、ビットコインや個別株への投資など単なる決済手段に留まらず、決済周辺に必要かつ相乗効果のある銀行や証券会社のような役割も果たすことによって収益モデルがより強化される仕組みを構築しています。

通常、金融サービスを提供する会社は銀行なら銀行、証券なら証券など1~2つのサービスに特化する会社が多かった中でSQは広範で利便性の高い金融関連サービスを一気通貫で提供することによって、顧客から、そして市場から評価されるようになりました。

Square Investor Presentation—(March 2021)
https://s27.q4cdn.com/311240100/files/doc_presentations/2021/05/Square-Investor-Presentation%E2%80%94March-2021.pdf

更にSQは仮想通貨分野においても市場に大きな可能性を見出し、先述のCash App上でのビットコイン売買機能を提供するだけでなく、コミュニティを保護するためのオープンソース基盤であるCryptocurrency Open Patent Alliance(COPA)も立​​ち上げるなど当市場に対して積極的な投資を重ねていくことで大きな成長を見せています。2021年1QのBitcoin関連売上高は約3,900億円、前年同期比11倍となりましたが、利益は約83億円と約2%ほどに過ぎず、収益性にはまだまだ課題が残る結果となりました。しかし同期決算発表においてCEOのJack Dorsey氏は「Bitcoinは国際通貨としての大きな可能性があると考えており、当社は可能な限りそれを推し進めていきたいと」語るなど今後の同市場への積極投資の姿勢を見せていました。

3.会社総額

時価総額:12兆7,000億円(7月7日時点)

純資産:2,560億円 (2020年12月時点)

資本金:非公開(2020年12月時点)

従業員:5,477人(2020年12月時点)

4.業績

(単位:百万円)

売上高営業利益経常利益当期利益1株益(円)会社予想売上予想EPS(円)
2018年12月期364,779▲4,049▲4,253▲4,253335,118~341,7540.13
2019年12月期521,31344,24041,83023,56935.4487,746~494,3820.21
2020年12月期1,050,432▲2,08223,88623,56992.9652,540~659,1760.24
2021年3月1Q559,3347,4924,4194,3159-(非公表)0.16

※株価:244.64円 (7月7日終値)
・予想PER:499.27
・実績PBR:41.61倍
・EPS(予):0.16
・EPS(実):0.41
・配当利回り:無配

2020年12月期は、前年同期比52%増の1,066億円の営業収益を達成しました。特にCash Appにおいては、新規顧客獲得と既存顧客ネットワーク維持に力を入れました。2020年12月期末には、Cash Appの月間取引アクティブ顧客数は3,600万人を超え、前年同期比で50%以上増加、顧客1人あたりのP2P取引も前年比で50%近く増加するなどし、営業収益は前年同期比162%増の340億円と、堅調な伸びを示しました。販売者向けサービスにおいてもおいて成長を続け、特に2020年12月期には、オムニチャネルやオンライン販売業者のGPV(Gross payment volume)がSeller GPV全体の半分以上を占める成長を見せ、前年比13%増の472億円の営業収益を生み出しました。

2021年1Qはキャッシュカード利用が前年同期比約2倍増加、加えてパンデミック下における医療関連企業への更なる展開も行うなど通期目標の営業人員倍増も合わせ、今後も積極的なマーケットシェアの拡大が期待出来そうです。

COVID-19の影響に関しては、2020年1Qにかけて、広がる在宅需要からいわゆる対面タイプの収益が大幅に減少し、販売者向け事業のGPVが前年度と比較し減少しましたが、同年3-4Qにかけて、国や州からの在宅要請の緩和及び企業のパンデミックに適応するための事業転換が見受けられ、特にSQにおいてはカードを提示しない取引が増加しました。結果としてトランザクションベースの収益が減少したにもかかわらず、年間収益は全体的に増加GPVと収益がプラス成長を遂げました。

5.財務分析

1)成長性

5年間CAGR約50%という数字に加え、2026年には18.5兆円の市場規模になると言われている電子決済市場の中でSQのサービスは先述のエコシステムでの利用者継続性も見込まれ、シェアも徐々に伸ばしています。かつSeller ecosystemに関する米国TAMはトランザクション4.3兆円、ソフトウェア3.3兆円、スクエアキャピタル1.3兆円、財務サービス0.6兆円の合計9.5兆円。Cash App ecosystemに関して言えば米国TAMは送金442兆円、決済221兆円、投資332兆円の合計995兆円と米国市場だけでも多くの成長余地を残していると言えます。かつ長期的に海外新規市場への進出にも言及されていることからもSQの成長性は高いと考えられます。

(2)収益性

SQの直近期末の営業利益率は1.06%、5年平均では0.56%と業界平均(31.08%,32.45%)と比較してもかなり低く、EBITDA Marginも0.69%と物足りない数字になっております。現在の収益性は低いと考えられますが、先述の事業開発やNet debtを勘案したLevered Free Cashflow▲467億円を鑑みてもSQは現在多くの先行投資を行なっていると考えられるため、それらが花開くタイミングを待ってみてもいのではないでしょうか。

(3)安全性

2020年12月期のB/Sによると、1年以内に返済期限が到来する負債が4,236億円、それ以降の返済期限の負債が2,466億円あります。一方、現金は3,185億円、1年以内に返済期限の到来する売掛金が1,139億円ありました。そのため、負債総額は現金と短期債権の合計よりも2,378億円多いことになります。この状態は一見、危険なように見えますが、SQの企業規模を考えれば、安全性に関しては現状問題ないと考えます。

6.トピック:金融企業が音楽ストリーミング企業を買収?

21年3月、音楽ストリーミングサービスTIDALの過半数の株式を約329億775万円で、SQが買収したことが報じられました。金融企業が音楽ストリーミング企業を買収すると聞くと驚く方も多いかもしれませんが、今回の買収に関して、CEOのJack Dorseyは、Twitter上で「要するに、アーティストが自分の作品をサポートするための新しい方法を見つけるというシンプルなアイデアだ」と買収理由を説明しました。

この買収に関しては仮説の域を出ませんが、これには近年注目度が高まっているアーティストの権利保護やファンとの繋がりから生まれる投げ銭などの収益、更にSQが注力しているBitcoin関連技術であるブロックチェーン技術と親和性のあるNFT(Non-Fungible Token)での作品取引などを見越してSQはTIDALを買収したのではないかとも考えられます。

7.今後の業績予想

2021年1Qは、世界中で厳格なロックダウンが実施されたにもかかわらず、順調に業績を伸ばし、かつグローバルにおける営業収益は前年同期比で80%近く増加。全体の8%を占めました。特にSQ最大のグローバルマーケットであるオーストラリアでは、積極的な新規顧客獲得と市場の継続的成長により、2021年1Qの営業収益は前年同期比で倍増しました。

更にパンデミック前の2020年から今日まで、キャッシュレスビジネスのシェアは下図からも見て取れるように、米国やオーストラリア、カナダ、英国で2倍以上、日本ではほぼ2倍になっています。冒頭で述べた市場成長と提供サービスの強み等を鑑みてもSQの業績は今後も成長を続けていくと考えられます。

Square「After One Year of COVID-19, New Square Data Reveals the Share of Cashless Businesses Has More Than Doubled」

https://investors.squareup.com/news/news-details/2021/After-One-Year-of-COVID-19-New-Square-Data-Reveals-the-Share-of-Cashless-Businesses-Has-More-Than-Doubled/default.aspx

これらに加え、Bitcoinを法定通貨にしようという動きが出ている中米エルサルバドルなど更なるグローバル展開の可能性等を鑑みると、まだまだSQの成長余地は大きいと考えられます。

アナリスト予測(※)においてもRosenblatt SecuritiesのSean Horganが330ドル、NeedhamのMayank Tandonが310ドル、J.P. MorganのTien Tsin Huangが300ドルと [買い]の評価するアナリストが多いことからも当銘柄は有望であると考えられます。

(※)

TipRanks Smart Score performance「Square Stock Forecast & Price Targets」

https://www.tipranks.com/stocks/sq/forecast

8.参考リンク

・U.S. SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION「FORM 10-K Square, INC.」
https://s27.q4cdn.com/311240100/files/doc_financials/2020/q4/Square-10K-2020.pdf
・Square「2021 Shareholder Letter」
https://s27.q4cdn.com/311240100/files/doc_financials/2021/q1/Q1-2021-Shareholder-Letter.pdf
・Square「2019-Q1-Shareholder-Letter-Square」
https://s21.q4cdn.com/114365585/files/doc_financials/2019/Q1/2019-Q1-Shareholder-Letter-Square.pdf
・Square「2019-Q4-Shareholder-Letter-Square」
https://s21.q4cdn.com/114365585/files/doc_financials/2019/q4/2019-Q4-Shareholder-Letter-Square.pdf
・Square「Investor Presentation -March 2021」
https://s27.q4cdn.com/311240100/files/doc_presentations/2021/05/Square-Investor-Presentation%E2%80%94March-2021.pdf
・Square「After One Year of COVID-19, New Square Data Reveals the Share of Cashless Businesses Has More Than Doubled」
https://investors.squareup.com/news/news-details/2021/After-One-Year-of-COVID-19-New-Square-Data-Reveals-the-Share-of-Cashless-Businesses-Has-More-Than-Doubled/default.aspx
・Square「Square Updates Second Quarter and Full Year 2018 Guidance」
https://squareup.com/us/en/press/square-updates-second-quarter-and-full-year-2018-guidance
・U.S. SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION「FORM S-1 Square, INC.」
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1512673/000119312515343733/d937622ds1.htm
・Yahoo! Finance「Square, Inc. (SQ)」
https://finance.yahoo.com/quote/SQ?p=SQ
・Bloomberg「Jay-Z and Jack Dorsey Want to Fix the Music Business. Can They?」
https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2021-03-07/why-did-square-buy-tidal-jay-z-and-jack-dorsey-want-to-fix-the-music-business
・CNBC「Square gets a bitcoin boost with revenue up 266%」
https://www.cnbc.com/2021/05/06/square-sq-earnings-q1-2021.html
・CNBC「Square closes up 5.5% after report that it plans to offer checking and savings accounts」
https://www.cnbc.com/2021/05/24/squares-closes-up-5point5percent-after-report-that-it-plans-to-offer-checking-and-savings-accounts.html
・CNBC「Square closes up nearly 5% after Jack Dorsey’s company launches its own bank」
https://www.cnbc.com/2021/03/02/square-stock-jumps-after-it-launches-its-own-bank.html
・REUTERS「Square sails past profit estimates as bitcoin volumes surge」
https://www.reuters.com/technology/square-reports-profit-first-quarter-bitcoin-volumes-surge-2021-05-06/
・NASDAQ「Square, Inc. Class A Common Stock (SQ)」
https://www.nasdaq.com/market-activity/stocks/sq
・NASDAQ「Now That Cash App Powers Square Earnings, Expect SQ Stock To Soar」
https://www.nasdaq.com/articles/now-that-cash-app-powers-square-earnings-expect-sq-stock-to-soar-2021-06-07
・UnivDatos Market Insights「Global Digital Payment Market: Current Analysis and Forecast (2020-2026)」
https://univdatos.com/report/global-digital-payment-market-current-analysis-and-forecast-2020-2026

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